イムジン河、水清く
イムジン河は濁り
流れは暗くよどみ
河を渡るゴンドラから
私たちが見たのは
境界に塗りこめられた咎
遠く近く
案内の徐さんが語るのは
河をめぐる韓と朝の
虚実の時空
なにかあくどいものが
北の方からは流れてくるのだという
きわどいものや見えない害悪
触れないもの
まさか死者の骸さえも
いつかの宣伝スピーカーの音響は
誇張か嘘か
あるいは風聞か事実か
掴み切れない言葉の浮身を
私たちは流れる
黒い雨雲が迫っていた
そこはDMZ(非武装地帯)
深い裂け目か
瞬間の死
北と南の
記憶と希望の
足元の深いクレパスを
雪崩れ落ちて
私自身に殺到するもの
38度線の垂直の記憶へ
地雷原の沈黙は横たわる
私のどこかで
名指されているもの
どのようにして
それを交し合えるのだろうか
観光客でしかありえない事実と
観光客ではありえない存在の
見えない
越えられない段差の向こうへ
意に添わぬもの
理解が届かないものの方へ
農夫の形をした
糸口は雨音の向こうに垣間見え
イムジン河、水清く
とうとうと流れる
希望の歌声が
頭の中を駆け巡る
はるか頭上を弾道ミサイルが飛ぶ
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