詩集「アフリカの日本難民」
アフリカから届いた日本人の詩集ということで、近いのか遠いのか、その距離感が捉えられなくて不思議な感じがしました。
筆者は農業技術者として、四半世紀のあいだ、「アフリカの河の水」を飲んできたということです。現在はアフリカのケニヤに在住。
第一部の「アフリカ」では、長年アフリカで働くなかで、すっかりアフリカに洗脳され、教わり、感謝の祈りすら捧げているというアフリカというものが描かれています。私たちの画一的なアフリカのイメージというものが詩的な洞察と表現と想像力によって静かに揺さぶれれ、読み進めるうちにアフリカの懐へといざなわれます。作品「スラム点描」では実際のスラムを案内されているような気になりました。
第二部の「日本難民」ではアフリカという光源に照らし出された日本難民の自分というものが問い直されています。否応なく人間がその原点に返されるアフリカのただ中で、その現実に問われ、洗われ、ふと立ち止まったとき、そこに見える自分自身というもの。そこに「耐えるんだよ」というアフリカの声が響いているでしょうか?
日本難民などありえないという常識が、読者としての私の中で鋭く問われています。
深く揺さぶられる詩集です。
2010.11.4 下前幸一