≪ひまわり≫

         竹内元


その人はひまわりの花が生きろと言っていると言う

僕はその言葉の前にしばし立ち止まっていた
生きることの裏についてくる死というもの
それは一枚のコインのように裏側にある
僕にその言葉が見えたのは死ということが身近にある病ゆえか
彼女の夫が政治犯の無期囚で
彼が僕らを裏切らないがために出られないのだと知らなければ
僕はその言葉の前を素通りしたかもしれない
沖縄奪還のデモで機動隊員が死んだ事件を理由に彼は無期刑を受けた
無期囚というが反省すれば15年位で出られる
彼が冤罪を主張せず、また非転向でなければ28年をも超えることはなかっただろう
1971年という時代、沖縄奪還・安保粉砕
幾たびもの暴動と闘争に彼は見せしめの刑を受けた
彼と僕とを分けたのは偶然だったかもしれない
漆黒のなか僕らがただまっとうに生きようとしていた時代
あからかにもえた圧殺の杜の尖端に彼はいた

彼女が生きるというとき
僕には簡単に連帯と口にすることをはばかられる
命かけてという言葉が文字通りの重さを持ち
生死を共にせんと歌うその言葉どおり実践しているか

想像をできる限りの困難と苦痛を我がものとして

言葉を武器に闘おうとするが
無期刑という名の終身刑とは
その前にあらゆる言葉が軽すぎて弾きかえる

だからそうなのか
彼の描いたひまわりが言っている言葉を聞けというのか
彼のひまわりの絵は叫びをあげていたのだ
“絶望ではないのだ、共に生きよう”と

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 竹内さんはとても精力的に詩作をされていて、紹介するのがなかなか追いつきません。今回の詩は生の思いをそのまま吐き出したという感じの詩です。それぞれの生き様と思いの重みによって詩を成り立たせようとしていますが、言葉が思いの重たさに耐えかねているという印象です。しかしそれにもかかわらず、言葉にすることからしか始まらないということも事実だと思うし、詩は事実に負けることからしか始まらないのかもしれません。(シモマエ)