風の景色
紀ノ国屋 千
今日
秋を旅してきた風に
背伸びするコスモスたちを
見つけた
立ち止まり 息さえ潜めて
見詰める
太陽から 注がれた光は
整列光線となつて
大地に降り注いでいた
薄桃色の花びら八片
黄色い花心に吐息が漏れる
秋桜 秋桜
呼びかけながら老人が行く
青い空に瞳が吸い上げられ
転がって行く 大空
やがて流れるいわし雲
風と風は 一休み
群れつどう コスモスたちの
モテットがそよぎだす
高く低く 遠く近く
ゆらゆらと
丘のもと 大地を染める
ゴーギャンの黄金色
するどく溌剌と
弓を引く稲穂たち
さわさわと おう揚に
実りを 重みの
ファッション ショー
光は 正しく ゆるやかに助走して
一天文単位の旅のはて
やがて 木の葉 花の葉
野菜の葉脈にたどり着き
命の温度みに包まれた
そして
遠い太陽に
まあるくおおきな 虹を還した
秋は風をつれ
横に 斜めに 旅をする |