気持ちクン
下前幸一
気持ちクン すねてます
彼女からメール来えへんて
気持ち…気持ちクン
喫茶店行こか 元気出しいな
週刊誌読んでます
「…嫌いなオトコはしつこいオトコ…」 ガーン
気持ちクン ガーン
気持ちの奴 焼酎飲んでふて寝
ひざ抱いて丸くなってます
夜
気持ちクンのなか、物語が駆けてます
「…殺さんといてや、ボクのこと
五時半 ピピピピ…
シゴト!
気持ちの奴 元気です
彼女の寝顔想います オハヨ!
トラックの運転席のまわり 気持ちクン、跳ねてます
ヤマきれい… 気持ちクン、彼女に話しかけてます
…うわあ雪や、雪や! 気持ちの奴、はしゃいでる
ねえ、トラック止めてえな 雪さわりたい
夜、手紙書きます
気持ちの奴 覗き見してます
うまいこと書いてや
ボクのことちゃんと伝えてや
あて先は、思い出
いつまでも、返事来ません
気持ちクン 落ち込んでます
自分に言いきかせてます
何べんも言い聞かせて
何べんも何べんも頷いてる
「でも、どこへ行ったらええんやろ…
「分かれへんねん…
雲間に微笑み 浮かんでます
水ぬるむ季節の
うわの空
迎えに来てくれたのかな、彼女
「…知らん
もう、忘れた…
流れる雲間に消えていく
「ボクのこと 決めつけんといてや
潰れたんと違うで
…会いに行くねん
消えていく 気持ちクン
僕の中のどこか
遠いところ
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