目は
                         永井ますみ



目は窓
見つめられるとすくんでしまう

目は窓
すばやく開閉されるまぶたの
シャッター音がかすかにして
記憶される映像としての私

ああ、日は窓
夕焼けの校舎の窓から
秘かに見つめていた白いテニスのユニホーム
なにげなく振り向いて
視線の内に捕らえられる私

このところ街角のあちこちに
記憶される窓が設置されている
銀行から金を引き出している映像
新しいバッグを買う映像
竜車に乗り込む映像
その男のがに股で歩く癖も
すべてが記憶され時代の脳裏に刻まれる
選ばれたひとつの記憶が
執拗に放映される
冷たく見られていることの意味

目は生け簀の魚のように閉じられることなく
気弱な鶏のように瞼を何度もひくつかせ
シャッターを切り続ける
山積みの記憶のゆえに
窓に映ったものを軽く受け渡そうとする私
のような私たち