今は
夕日の美しい街
歩道橋の上に立つと
しばらく動けない
誰もが知っていると思って
誰もが走っている道をゆくと
先の方に大きな穴ぼこがある
少し高い位置に立つとよく判る
危険なのは穴ぼこではない
危険なのは何も見えなくなることだ
事実
夕日の向こうには何もありはしない
今は討論する時ではない
今は信じ合う時だ
と
大きな声して云う
そんな今がきっと来る
ころがるような早さで
私が死んだって
顔埋める
手向けの白い花はいらない
輝く石もいらない
だけど今は
細々と生きてゆこう
生きてゆこうね
そっと肩に手をやると
見知らぬ人がゆっくり
ふりかえる
「詩朗読きゃらばん」と銘打って、北海道から沖縄まで、生活語詩を中心にした朗読会を主宰されています。精力的に活動されている詩人です。新・日本現代詩文庫110「永井ますみ詩集」より、詩を紹介します。この詩は若い頃の詩だそうですが、先日のEarth Poem Projectで朗読されました。
永井ますみ詩集 新・日本現代詩文庫110
土曜美術社出版販売 発行