新宿駅西口地下広場


鶴見駅から出発して
米軍ジェット燃料タンク車七十輌あまり
旅客線中央線に新宿駅付近で乗り入れ
立川駅へ向かう
立川基地から燃料はベトナム戦線へ
見えない車輌
夜の闇の中

毎週土曜日の夕方
新宿駅西口地下広場に
反戦フォークの集会
一人ではない
ともに歌う
信じていたわけでもない
信じていなかったのでもない
学生だったわたしはそこにいた
ヘルメットを被り
タオルを口に巻いた過激派の学生たち
タテカンの文字をリピートしている
警官は
止まらずに歩け
と警棒を振る
地下広場は
歩きにくいゴツゴツとした石のタイル
やがて月日が経ち
広場は「通路」に書き換えられた
繋がりが
ほどけていったワレワレ

二本のレールは
あの時のまま固定され
今も重い車輌を乗せ
闇の中へと続いている





詩集「おいしい塩」  神田さよ 著

                  編集工房ノア 発行

 最近まで「新現代詩」でご一緒させていただいた神田さんの詩集です。
 詩集の前半、そして中心は、阪神大震災で被災された一人暮らしのお年寄りや障害のある方たちを、訪問する活動の中で書かれた詩です。それらの詩群を背後から支えているのは後半に書かれた父上の戦争体験と自らの学生時代の体験。
「学園闘争のあった時代に学生生活を過ごし、そこで感じた矛盾、不条理を抱えたまま二十一世紀に生きているわたし。これからもこのわたしのまま書き続けていくだろう。」