デイに「行きましょう」「行かない」
               

皮膚に張り付く熱射をまとい
ひとりあなたは歩いている
煙のように消えた目的の
名残の焦りにひかされて
うろたえながら
とくつん とくつん
ついさっきまで確かに見えた
行くべき場所を手探りながら
濃紺のダウンを揺らめかせ
体温越えの舗道をどこまでも
とくつん とくつん
私の視界をあなたは去っていく
手には負えない言い訳と怒りと
セクハラの顰蹙を携えて
離れていくあなたの背中が
私の中で燃えていた
とくつん とくつん
遠くでいすらえるがぱれすちなとその民を
毒虫のように駆除しようとしていた
ろしあはうくらいなを踏みつけ
土地と民を奪っていた
にほんはかねとつぼに揺れた
ばんぱくに人々はひしめき
いのち輝く未来に疲れていた
とくつん とくつん
私はあなたの部屋の戸口に立って
「行きましょう」「行かない」の
言い合いを繰り返した
ひとり暮らしのがらんどうの部屋には
焼け焦げた朝のトーストと
ゴルフスイングのうぬぼれと
堪えきれない首の痛み
次第に膨らむ疑問の渦を
ここではないと悲しみながら
あなたは歩いていく
濃紺のダウンに茹りながら
とくつん とくつん
と、
どこか私の知らない場所で
あなたの足が止まった
くつん
行き場のないあなたの視界がそのとき閉じた
倒れこむあなたを受け止めたのは
施設の清潔なベッドと
看護師の呼びかけ
これで良かったのかという
道しるべのない問いを残して
私の視界をあなたは消えた
あなたの拒絶が疼いている
伝える言葉を見つけられないまま
「また来ますよ」という言葉がうなだれた