樹の伝達
下前幸一
風が歪んでいる
空は白く濁り
確かな病みの予感に
樹は俯いている
毛根から導管へと
樹は蝕まれていくのかもしれない
あるいは葉脈から
樹は嘆きを吐くのかもしれない
樹から樹へ
解読できない伝達を
それでも樹は発し続けるのかもしれない
樹であることを証するように
樹は沈黙に沈んでいる
樹が嘆くのは病みではなく
僕たちが理由に閉ざされているからだ
白い濁りに樹は霞んでいる
樹は僕たちの内にあって
深い痛みとして疼くのかもしれない
樹は僕たちの企図に運ばれて
伐採をむしろ許すのかもしれない
樹は僕たちの外にあって
静かに見ているのかもしれない
僕たちに向かって
私は、あなたなのだと
見えない
触れない
樹のざわめきのかたわらで
言葉は氾濫し、素通りするばかりだ
足元は泡のように弾けて
僕たちはこの一時を耐えるように
ただ風に運ばれている
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