砂の降る場所から
下前幸一
2004.10.27、着
砂の
降る場所
ひざまずく
頼りなげな表情と
浮かぶビデオの呟き
立つ覆面の男と
乾いた声明
「彼らはなぜ日本政府が法を破ってイラクに自衛隊を
派遣したのかと尋ねています…
権力者の満面の断言が
水あめのように
たわむ場所を流れる
派遣という派兵
占領軍下の復興支援
虐殺と連行、ミサイル攻撃と自爆攻撃と
エアーポケットの「非戦闘地域」
大量破壊兵器という虚言
憲法前文の精神とは?
刻みが時空を断罪する
その刹那
何かがズレる
さみしさの海に消え入るように
君は去っていったのだ
思いを
記憶の縁に残して
砂の降る場所に
何かが今もズレたまま
バグダッド
占拠された暗黙の
長い、扁平な一日の終わり
長い、扁平な影を引きながら
どのように思考を閉じたらいいのだろう
高速道の橋脚の下
遠い砂の
降る場所にいる
この場所に寄る辺もなく
少し傾きながら
物思いを僕は眺めている
シャケ弁スペシャルの晩秋
モザイクのように
不確かな感情が
行き違った
何もない、今
何もない、自分の
腰砕けた確信と
柔らかく窒息した信念に
電波塔が立っていた! |