片羽の折れた小鳥
だからといって
絶望してどうなる
悲嘆してどうなる
怒涛のように押し寄せてくる諸々を
ひとまず
洗濯物と一緒に袋詰めにして
押入れに突っ込む
小鳥が空を見るときのように
きみの膨らかな瞳は青く瞬いて安らぎ
夜深けに歌うきみの旋律はレクイエム
そんな夜と昼を繰り返しながら
いつまでが昨日であったか
いつからが今日であったか
なにげなく押入れを開けると中から
袋詰めがいくつも
都合のいいことに
今朝の空は晴れている
太陽と風に肖って
目いっぱい洗濯物を干す
ともすればこの身を病み
(もしも わたしが死んだら)
怒涛の勢いで差し迫ってくる諸々
いくつもの袋から諸々ぜんぶ取り出して
太陽と風にさらす
胸の中が一瞬空っぽになり
深く息を吸いこむとソーダの味がする
泣いても 笑っても
きみはわたしの子
片羽の折れた小鳥のように
依然として傍らに
在る
切実な思いというものが凝縮された詩集だと思います。
その切実さは、若いころからの闘病と療養の日々の記憶から、また精神を病み、家に閉じこもる息子さんとの日々の営みから訪れるもののようです。そして片羽の折れた小鳥のような日々に、ひとときの安らぎと確かな希望の光を届けるのは、詩の力だと思います。
時にくじけそうになりながら、その都度、心を立て直す言葉の力(力という言葉はもしかしたらそぐわないのかもしれませんが)、そういう詩の働きがじんじんと伝わってくる詩集です。
発行 コールサック社