と、
下前幸一
と、
誰やらの手に抱きとられて
呼びかけに
何かが目覚める
二の腕の温かさ
耳たぶに触れる囁きを
探っている
探るという働きそのものを探りつつ
と、
物語りが動く
メリーのように
クマさんの姿が近づく
不安定な傾きに
思いの芽は流れていく
ゆらゆらとまわる
懐かしい場所を確かめるように
知ることは
知るという働きを創ること
およそ物語りは
そのようにして始まり
始まりはざわめき
おぼつかない安心にもたれて
物語の磁場に
ようやく君はお座りをする
と、
その刹那
君の額に一筋の光が走る
それが、知恵だ
家族という物語は
柔らかい破綻を抱いている |