……              
	 イランの地に逃れてきたあるアフガン人の詩人が、イランを出る前、その感情をこ
	んな詩に託して去っていった。


	  私は歩いて来た、歩いてここを立ち去ろう
	  貯金箱を持たない異邦人は、ここを去るだろう
	  人形を持たない子どもは、ここを去るだろう
	  私の流浪の呪縛も今夜、とけるのだろう
	  空になった食布は、折りたたまれるだろう
	  これが私だ、すべての地平を苦しみながら彷徨った
	  これが私だ、私の姿を見た人は皆、去ってゆく私を見たのだ
	  自分のものではないものはすべて、置いて立ち去ろう
	  私は歩いて来た、歩いてここを立ち去ろう

	          「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない
	      恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」モフセン・マフマルバフ著 より	
	

*現代企画室刊
 映画「カンダハール」の監督、マフマルバフによる著書ですが、その中に紹介されていた詩です。 嵐のように戦争の情報は通り過ぎたけれども、アフガニスタン人の暮らしの現実、人々の心の現実は、 何ひとつ知らされてはいないのではないか、と思います。

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