暗示的な          ハジメ・オバタ

頑固に節くれだったるもの 執拗に灰色に光を発するもの 絶えず眼下に転がってあるもの 冷たい視線で上空を見上げるもの そして 足で踏みつけたい欲望にかられるもの ならば踏みつぶせ と 暴力的に 自虐的に踏みつぶせ と 〈ぐちゃ〉と憂鬱な音を吐いて 膿とも体液ともつかぬ 得体の知れぬとろみが かりそめの形而上学的な臭気とともに 四方八方に散って ぶら下がっている 芋虫ぶらーり ぶらーり と もしもそれがある種の快楽に つまり 耳元で聞く灼熱の吐息に豹変する・・・としたら しかし幻想は頭上に即座にハンマーをうち下ろし 絶えず容赦なく敗北の遠吠えへと駆り立てる はいつくばることを教え 五感のすべてを切り裂き 無意味に生きよと命ずる・・・としたら やがて眼下に存在したものがなぜか意志を表明し 忽然と行く手に立ちはだかるとき 幾重にも鍵のかかった太古の扉が露わになる それはあまりに暗示的な音楽を奏で 許し難く絶望的な何かを語りかけてはいるが。

*絵画的な詩です。と言うよりも、ある絵画を見、それに触発されてかかれた詩、という印象です。 だとすれば、作者はどのような絵画を目前にしているのでしょうか。もしかしたらとても観念的な 絵ではないでしょうか。観念がいま自らを産み落とす、その場のような。観念の変態、観念の意思…。
「穂」Vol.32 倉敷市日吉町514-3、小幡方

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