習慣(週刊)あんじゃない           南修治

◎感情を表に出さないこと  表面的にはしっかりしているのだけど、上辺ばか りのように思える人はいるものである。心の奥底で 何かを求めているような気がしてならない。  とても元気な教員とお話しする機会を与えられた。 その先生は学級崩壊の現場で四苦八苦している人で あった。席に座らない子供、授業妨害の様子などを 語ってくれる。しかし、不思議なことに、そのこと は全く苦にならないかのように語っているのである。 何故だろう、僕は疑問に思った。厳しい現実の元に、 少なくとも気持ちとしては落ち込んでいいはずなの に、その様子はない。反対に日常的な、何でもない ことを話している時の方が普通の穏やかな顔になる のである。どんな作用が心に働いているのだろうか。  雑談から進んで、会話は先生の無意識の世界に入 っていった。どんな子供であったのか、飲み込んで きた感情は何か。心悩む人のお世話をする時には必 ずその世界に入り込み援助するものである。  商売で忙しかった両親、喧嘩が絶えず暴力を振る う父親、やがてその家庭もバラバラになっていく中 で、息を潜めて我慢し、感情を表さないことしか彼 の生きる道はなかったようである。少しずつその場 面に触れたいった時、その先生の唇が揺れ沈黙が覆 った。しかし、次の瞬間、子供時代の生きるための 選択が作用したようである。深刻と思える雰囲気を いとも簡単にうち破り、笑いをもって話題をすり替 えてしまった。こちらの生き方のほうが楽なのかな。

* 通算No659 2000-4-17 毎月曜、南修治刊 岐阜県恵那市三郷町佐々良木深瀬
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