あとがき
ひょんななりゆきで「新日本文学」の7月号の編集を担当することになって しまって、いろんな初めての経験にとまどっています。 いろいろ考えて、詩特集のテーマを「詩による現代史の試み」としました。 いろんな年代の人たちに、自分にとっての発端の場所、誕生の時というものを テーマに詩を書いてもらって、その詩によって現代史というものを構成できな いか、と考えたのです。 原稿は順調に集まっているのですが、僕はそれらの思いの深さにとまどって いるしまつです。発端というのは誰にとっても、それぞれの出発ということで、 思いは深いものですが、それらは歴史的であると同時に、いやそれ以上に個的 なものです。それらを、例えば、年代順に並べて「ハイ、現代史です」なんて、 言ってもいいものかどうか。 逆に、もしも歴史というものが語られうるとしたら、それは年号や事件や事 実の羅列では決してない、ということが分かる。 歴史は、文字通り無数の特異点の集積であって、決してリニア(線形)に語 られてはならない。 今年もよろしくお願いいたします。