あとがき

 日本の夏というのは、こんなに暑かったのか、という思いに日々とらわれて います。自然食品をトラックで配達しているのですが、昔はパワステもクーラ ーもない車で、それでもなんとかやっていたのですが、今ではとても想像もで きない。強烈な日差しに、半分日射病状態になりながら働いています。  水をあびたように汗をかくので、渇きがひどく、時とともに深まっていく。 飲んでも飲んでも渇きはおさまらない。仕事の後の冷たいビールと焼酎だけが、 かろうじて僕の渇きをいやしてくれる。いや、ごまかしてくれる、と言うべき か。  何もしていない。ただ生き延びていく一日を、今日も重ねている。それでい いではないか、と、これではいけない、が、僕の中でせめぎあい、僕はただお ろおろと飲みふけるばかりだ。  向井孝さんから、大道寺さんの句集を送っていただいた。このところの日々 の暮らしの中で、その存在を、ほぼ完璧に忘れていた人の、寡黙な言葉。その 瞬間、僕の渇きが、スッと落ちた。

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