あとがき

               阪神・淡路大震災委で淡路島の北淡町に出現した野島断層を見たでしょうか。いま、野島断層は国の天然記念物 に指定され、立派な保存館をふくむ記念公園になっています。  道路や生垣や地面が数十センチも左右上下にズレている断層の現物を見せられると、改めて地震のエネルギーに 圧倒される思いがします。しかし、実を言うと、僕が圧倒されたのは、観光城下町とでも言うべき、賑わいによっ てでした。保存館の近くには、遊園地さながら、食べ物屋やお土産屋が軒を連ね、観光客を呼び寄せています。秋 の日曜日ということもあって、大型観光バスや乗用車が続々と到着し、観光客を吐き出していきます。その熱気に 圧倒され、僕はふと「ああ、復興というのは、こういうことなんだ」と思いました。こういうことって、どういう ことだ、と言われても、うまくは言えないのだけれど。あえて言えば、震災のリアルは保存館の内部に封じられて、 僕たちは安全に観光できる、ということだろうか。    記念公園のフェンスを隔てて、一軒の民家があります。その家の塀は当時のまま断層の形に大きく歪んでいまし た。その手つかずのありようが、断層よりも、妙にリアルに感じられました。 また。

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