バイオリン弾き 川田エリ

傷つけあって夜を迎えにゆく日 競争か賭け事のような 感情の夜 君はとても強い赤を持ち 被害妄想のようなバイオリンを響かせる 私たちのオーケストラは緊張の糸を張る 君は 一撃を欲す瞬間の一寸前に いつも道が垣間見える気がしてた そして 15秒… 君の糸はぴーんと張られる バイオリンをあごで挟んで その時君が弾くバイオリンは 下手くそなのに妙に切迫して人を震わす もう、あとから いくら優しいメロデイーを奏でてみても 小手先にしか見えない 細心に奏でれば奏でるほど 見える心の回路 書かれた楽譜 君は過敏に赤を養い 瞬間のうちに復讐を願う でも、人を辟易させる下手くそなバイオリンは 君の耳にいちばんよく響いているのだろう 嘘が嫌いな人ほど 真実が怖いから 名演奏にいつも憧れているバイオリン弾き 君には 鳴りやまない拍手が贈られる可能性がある

*「A.Ma 23号」
*川田さんは個人で詩のペーパーを発行されています。一人でやっていくのはむつかしいですが、がんばってほしいです。

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