キリストによって滅んだ教会 掘 剛

                 ソウルから車で一時間 京畿道華城郡郷南面提岩里 むくげの花が咲き乱れ 坂道の向こうに 白い建物 あれが記念館 その向かいが提岩里教会だ 叫びがあり 鮮血が大地を染めた場所 一九一九年四月十五日午後二時頃 第七八連隊中尉 有田俊夫は 憲兵一個小隊三十余名を率い 提岩里教会にて十五才以上男子を集合させた 礼拝堂に集まった者 男二十一名 全員が銃剣、銃弾により惨殺された 教会は焼き討ちとなり 他に婦人二名 近隣にて六名が惨殺された 憲兵隊宿泊のために 民家一戸を残し 村は全焼となる だが、どうだろう 静かだ 叫びが聞こえて来ないほど 霊が静かな聞き耳を立てているからか 今、日本人である僕が 再建された小さな提岩里教会礼拝堂に佇んでいるのだが 牧師より 日本軍の侵略を学び 学ばなければ知ることもない そんなもどかしさを誰も非難する者もなく だが、やはり 僕らの血は既に殺人鬼である さあ、では祈って下さいと指名され 僕は祈らされたのだが 「待って下さい  日本人の祈りをあなたは受け入れるのですか」 などと尋ねることすらできないままに 僕は繕った殺人鬼の言葉で祈ったのだが 総計二十九名の霊はじっと潜んでいたのだろうか 提岩里教会は キリストによって滅びた教会 そんなふうに人は呼ぶ だが、違う キリストによって蘇った教会だ 今では信徒百名を越え 次なる礼拝堂建築を待つという 傍らのむくげの花を見つめていると 取り返しのつかない哀しみが 僕に襲いかかって来るのだが

*詩のホームページAscendannt のペーパー判です。

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