円                       寿崎登美子

最初は 小さな 円 いえ 凝り固まった 小さな点でしか なかったかもしれない 結婚して それは 二倍の大きさに ふくらんだ 子どもが 生まれるたびに 波紋が広がるように 円は広がり 幾重にも 重なって 包みこむ 球となっていった 波紋も 打上げ花火も 最大になった時が 消える時 わたしも 限りなく 成長しつづけて やさしい雨のように 地球を包み 雨が上がるように 静かに 死んでいこう            八木重苦の「雨」より拝借

*「虹野」45号 北九州市小倉北区長浜町14-12、山下方
*水面を打つ雨の波紋がまるく広がっていく、そのようなものとして、人生をたとえておられます。 それは美しい情景ですが、すこしものたりない気がするのは、円や球という抽象が、どうしようもなく 破れ、壊れてしまう、そこからしか人生というものは始まらない、ということを、 僕たちは知っているからだと思います。

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