波紋
玲音
ひと滴、零れ落ちた涙
速明な輝きは綺麗すぎて
ボクは思わず瞼を閉じる
君は
“嫌な過去はすべて忘れてしまいたい”と
ロぐせのように囁き
甘いキスをくれる
それはほんの一瞬
刹那の温もりを交わし
そして、また歩き出す
暗闇を彷徨うのは独りでは怖い
怖くて、ただ、立ち竦んで
誰かが通るのを待つ
どれだけ待っても
誰も通り過ぎることはない
声さえも聞こえてこない
不自然な静寂に包まれて
“もう、気が狂いそうだよ”
孤独、それがこんなにも苦痛だなんて
“愛しているよ、愛しているんだ”
儚くそして微かな叫び
暗闇は無情にも掻き消してしまう
何に縋る?
何を乞う?
君の心の湖に
小きな波紋が生まれたら
どうか、そっと見守ってあげて下さい
どうか…
“ねぇ、もう怖くないんだ…何も”
どうしてだろう?
あんなに怯えていたのに
君の気持ちが見えなくて
怯えていたのに
痛みもないよ
不思議だね
ポクが見えるよ
器は朽ちていく
少しずつだけど、確実に
見えるんだ…
違う、感じるんだ
心が見える
小さな波紋が生まれたよ
誰?
君は誰なのかな?
ねぇ、君のコトが好きなんだ
見て
小きな波紋が生まれたよ
*詩集「風と月と・・・」より
人は孤独そのものであるとき、あるいは渦中にあるときは、どうしてもひとりよがりになりがちなものですが、
孤独を対象化し始めるとき、言いかえれば孤独からさえも孤独になり始めるとき、
孤独という可能性が始動します。「器は朽ちていく」とう言葉にはこのような動きが感じられます。