花・野菜詩集W     羽生槙子 著

子どもとヒマワリ

庭にヒマワリが高く大さく咲いた 通りがかりの子どもが「ヒマワリだあ」と言い 「大きいね」とおとながこたえているのが 部屋にいるわたしに聞こえる 次の日 遊んでいる子どもたちが 「ヒマワリ ヒマワリ 大きいヒマワリ」と叫んでいる 「大きくてなんだかきみ悪い」 「ヒマワリ 二階に上がっちゃうよ」 「とどかないよー」 また次の日 子どもが 「あれ植えたんだと思う? 大きいねー」と言い おとながこたえている また次の日 子どもが 「大きいヒマワリ 大きくてまるい花だね」と言い おとなが「大きくてまるいね」とこたえている そしてまた「すごーい 巨大だよ 大きーい」 と子どもが叫んでいる この辺は子どもがたくさんいるんだ いつか花は実になり始めた と思った朝 草緑色のインコが三羽 ヒマワリの実を食べに来た インコは種の中だけ上手に食べて 黒い皮が地面にいっぱい散らばった それでわたしは種をとるためにヒマワリを倒したんだ 測ったら ヒマワリの丈三メートル六五センチ 花の直径三三センチ 幹のまわり一五センチ こういうの「満足」って言う? 「幸せ」って言う? 「さびしい」って言う?

*発行 武蔵野書房 国分寺市本多2-9-8
*羽生さん自身による花・野菜の写真付。英訳した詩ものっています。9・11以降の 繰り返す自問の中からできあがった詩集です。

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