春雨の降るなかで                       大西和雄

春雨が降っている 廃校になった小学校の校庭にたっている 春雨にまぎれ 子供のころの自分がゆれている 突然背後に子供達の歓声がわきあがり 次第に近づき通りこしていき 身につけてきたものとひきかえに 失くしていったものの大きさを思い 遠くをまさぐっている 何事もなかったように春雨は降り続き あたりは死んだように静かだ

  雨の日

雨だれの音 雨のにおいとしめり 雨と私とゆったり共鳴しあい 静寂のなかへとけこんでいく なにものかが不意に 雨と私をつなぐ糸を ケシゴムで消すように すうっすっと消していく 大切なオモチャをとりあげられ ワッと泣きだした子供のころのように 泣き叫びたい気持になっている

*「きまぐれのうふ」35号 大石和雄個人誌 京都市上京区七本松通一条下ル三軒町コーポラス北野701号
*季節や天候に託して、心の揺れをあらわす詩で、誠実であろうとする、作者の姿勢が伝わってきます。

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