I need it          モリタクミコ

夏のあいだは五時に一回目が覚める となりに手を伸ばすと いつも寝ているのは平たいイカ ひやりと指先がぬれて 毎朝、もう一段階目がさえる 記憶の中では白く輝く ホントは少し灰色の 長さ2メーター、幅1メーターのイカは (シーツにもつれてはみ出している脚は除く) どういうつもりのイカなのか 私が眠っているあいだだけここに居て ほら、イカの居るか居ないかを忘れて うとうとしてくるとまた (今まさに) くっきりと隣で寝息がする 一人暮らしなのに、和室なのに ダブルサイズのベッドを買い入れたのは私で それを考えると はじめたのはイカの方ではないのか コレが現れてから 布団を干すようになって シーツを洗うようになって 半分眠ったままで 毛布を直してやるのも なにしろ私がやってることでしかない それでは、コレと私の関係は何か それは今後のなりゆき次第 五年くらいで死んでしまうのがペットで 忘れた頃にも生きているのが伴侶で その違いは、イカと私がセックスしていることとは関係ない

*イカと私との間に、コミュニケーションはないのだけれど、何らかの了解が感じられ、 それが言葉以上の感覚性をもっているようです。

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