新装「風羅坊」貝殻篇X よねたみつひろ ● カフスボタンガイ 月夜の浜辺でひろった ボタンのことを ある詩人が書いていた 天からおちてきた 小さな きらめき そんなふうに 折々 心にとめられ やがて 忘れられたものたちが 満天の星々となって 輝いているのだ ● チョッカクガイ そういえば わたしたちも 遠い昔に 天からおちてきた たわいもないもの あどけないもの やくにたたないもの しかし ひとすじ心にしみるもの の末裔 奇妙な形に展開し ひととき闇をにぎわした もっとも古い種のひとつである