からくり人形  寿福 義久

               ねむりのドアをあけると 真っ青な空の中を 両手をいっぱいに拡げて 滑空している わたしがいた ひき込まれるような藍いろの 海の中をイルカと戯れて 遊泳している わたしもいた 荒荒しい音がして振り向くと 黄色い麦畑を蹴ちらして 目にも止まらぬ速さで 駆けぬけていった 別のわたしがいた 夕ぐれ薄墨色の細道を ぎごちなく頼りなげに あるく人影 その後ろ姿もわたし いろんなわたしがいて 眠りから覚めると そいつらは慌てて 一人のわたしになり済ます            

*「虹野」47号 〒802-0013 北九州市小倉北区長浜町14-12、山下方
 私というのは、いくつものからくりのよってできている。いくつものからくりを結ぶことによって、 一人の私となりすます。私の中にひしめく、からくりという操作不可能性。その、おもちゃ箱のような 面白さと、背中合わせの恐さが感じれられます。

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