からくり人形 寿福 義久 ねむりのドアをあけると 真っ青な空の中を 両手をいっぱいに拡げて 滑空している わたしがいた ひき込まれるような藍いろの 海の中をイルカと戯れて 遊泳している わたしもいた 荒荒しい音がして振り向くと 黄色い麦畑を蹴ちらして 目にも止まらぬ速さで 駆けぬけていった 別のわたしがいた 夕ぐれ薄墨色の細道を ぎごちなく頼りなげに あるく人影 その後ろ姿もわたし いろんなわたしがいて 眠りから覚めると そいつらは慌てて 一人のわたしになり済ます