恋の手前                         川田エリ

                 囲いの中に紛れ込んだ私は 君かだれなのか、君か何処にいるのか  わからない すれ違う視線や 立ち止まる影に つん、と立つ感情の触れ合う瞬間 その時から私は 正面ではないところから 君をみつめる ことしか できなくなる 背後から つん、と立った感情を突き刺してみる それから私は、忘れた 私は、笑った 箱の中の箱を辿って歩いて行く どんどん箱を開けてゆくと そこには 知っていることの中で羽毛のようにふわふわ  浮く真っ白いもの それは少し裏切りを含んで 私を恋へ導く

*「A.Ma」18号
*今回初めて送っていただいた川田エリさんの個人誌です。「誌」といってもB4の紙一枚のもので、ペーパーと呼んだほうがいいかもしれませんが…。
 言葉が誌表現となるためには、私が、私でないところの者へと二重化されるということが必要です。 他者は、私と、私でないところの私との間に析出される者であって、直接的に対峙する者ではありません。
 こういった事柄の発端の場所から発せられている詩であるという気がします。

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