心ひとつがきれいであれば
下前幸一
春がすみ
滲み
囀りは
高く
僕には見えない
ざわめく草
子供たちは駆けていく
あの世へ
壊れた安息のひとときに
心ひとつがきれいであれば
何故?
と、花は咲き
乱れて
また炸裂する
曇天に
際限のない
瓦礫の
浄土
僕にはいられない
溺死する川べりの
流れの
うたかた
痺れた
薄皮の
一枚下の
脱臼
僕には届けない
現実感のない
現実の
写し
明け方の
夢の満ち引き
その突堤に、僕はいる
僕たちの背後に
巨大な重量が回転している
ああ、
心ひとつがきれいであれば
確かさが
僕にも触れるのに
*先日、ある人の話を聞く機会がありました。すぐ近所で保育所をやっておられる松本さん。
たった一人で、パキスタンにあるアフガニスタン人難民キャンプに救援物資をとどけてこられました。
二百万円ほどの貯金を資金にして、小麦など生活物資を購入し、比較的小規模の難民キャンプで配布
したとのこと。ちょうど、タリバン政権が崩壊する頃で、ビザは発給されず、アフガニスタンへの入国は
かなわなかったとのことでした。
焼け石に水のような行動かもしれないけれども、居ても立ってもいられなかったと言います。
日頃、心の中のささいなことに、つまづいてばかりいる僕には、ある種の啓示のようなものを
感じさせてくれた話でした。