こころにぜいにくがついて
高明浅太
としをくえばくうほど
おれはやせていく
テレビもみないのに
この町をでようともしないのに
だれともはなさないのに
おれはやせていく
おいしいケーキ屋さんをしらないし
おいしいラーメン屋さんをしらないし
おいしいおこのみやき屋さんをしらないし
花のきれいな寺をしらないし
子どものよろこぶゆうえんちをしらないし
かのじょのよろこぶデートスポットをしらないし
このとしで
そんなわだいの中へ
はいれなくて
おれはやせていく
けっかんがういていく
おかしいよ
このとしで
やせてるなんて
みっともないよ
このとしで
下をむいてばかりなんて
もっとはらがでていいのに
もっとあぶらぎっていいのに
もっとはげあがっていいのに
もっとやかましくていいのに
おかしいよ
このとしで
やせてるなんて
でも
本当は
たまらなく
こころにぜいにくがついていて
こころがあぶらぎっていて
こころがはげあがっていて
おれはうちがわからぐすぐすになっている
もう
どうしようもないくらい
うちがわから
もろもろになっている
見えないか
たっぷんたっぷんのこころが
見えないか
てかてかのこころが
*高明浅太さんの個人詩誌「ひるねのねごと」のホームページより。
関西の詩集、同人詩誌の紹介にも力を入れておられます。「関西文学 06-947-3751」復刊の応援も。