来る夏          小野耕一郎

     新しい夏を迎える 太陽は雲を追い払い いちめんの青空だ 芝生に寝転んで もろもろの悲しみに別れを告げ 野に遊ぶ ひどく心は病んでいるのに やわらかな紫外線は それを打ち消すように さんさんと照り付ける 太陽が呼んでいる 神が遠くから貧しき者らを 招いている 行かなくては行かなくては 導くものの声を頼りに あれは太陽という神だ もう何日も歩き続け 太陽のもと 転げ回ったのだろう 急がなくては 夏はあっというまに通過する いま気持ちをひきしめて 来る夏に感謝し 僅かばかりの物乞いをしよう  

*約25年勤めた仕事を病のために辞めざるをえなくなり、それを転機として、 表現者としての精神的自立を遂げることを課題としておられます。
 個人詩誌「ひとり言だもんね」はきちんと手製の製本がなされていて、頭が下がります。
 でも、僕としては、太陽を簡単に(ではないかもしれないけれど)神と呼んでは、ちょっと まずいんではないかと思います。精神的自立は、神からの自立も含むような気がするからです。

戻る

ホームページ