眼鏡  北村 真

               夜の重さにつまずいて 眼鏡をはずす ついでに レンズもはがす 骸骨のような 細いメタルのフレームをティッシュで磨く 季節はずれの大掃除のように 黒い涙が 骸骨にたまっている レンズにもたまっている この涙は 僕が零したものなのか 流れ行く風景が零したものなのか それとも 眼鏡が耐え切れず流したものなのか 涙をふき取った骸骨に 涙をふき取ったレンズをスッポリはめ込む 読みかけの本を閉じて 本の横に眼鏡を置いて その横に ほんの少し軽くなった僕を横たえる

*「飛揚」No.33より 東京都北区赤羽西2-29-7
*今号の「詩のちらし」の最後に選んだ詩です。いろいろな同人誌に目を通していて、 まるで設計されたかのように、ぴたっとあてはまる詩が飛び込んできました。
 詩を、ある傾きの場においてしまうので、あまりいいことではないかもしれませんが。

戻る

ホームページ