眼鏡 北村 真 夜の重さにつまずいて 眼鏡をはずす ついでに レンズもはがす 骸骨のような 細いメタルのフレームをティッシュで磨く 季節はずれの大掃除のように 黒い涙が 骸骨にたまっている レンズにもたまっている この涙は 僕が零したものなのか 流れ行く風景が零したものなのか それとも 眼鏡が耐え切れず流したものなのか 涙をふき取った骸骨に 涙をふき取ったレンズをスッポリはめ込む 読みかけの本を閉じて 本の横に眼鏡を置いて その横に ほんの少し軽くなった僕を横たえる