ミイ                          いちのせまりえ

 ミイが、ゆうべ帰らんかったから、おじいちゃんとおばあちゃんが、 さがしに行った。学投から帰って、わたしもいっしょに、さがしに行 った。  ミイは、県道の横のみぞに、落ちていた。うす茶色の紙ぶくろが、 かけてあった。  ミイは、目をつむって、ねている。おばあちゃんが、起こそうと、 右足を持ちあげた。ミイは、鳴かない。おばあちゃんは、みぞにお りて、ミイをかかえた。左足が、だらんとしている。右目の上、左 足の上、おなかのところ、黒い血が、かたまっている。 わたしは、せなかを、なでた。  つめたい。  ミイは、鳴かない。  おじいちゃんは、ミイを猫車に乗せて、山に運んだ。わたしは、 だまって、ついて歩いた。おじいちゃんは、穴をほった。ミイを入 れて、土をかけた。おばあちゃんは、畑の百日草を取って、上に、 おいた。  おじいちゃんが、せんこうに火をつけた。  せんこうのけむりが、空に向かって、あがっていく。  ゆらゆらと、もんしろちょうが、飛んでいる。電信柱に、カラス が止まっている。笹の上を、くもが歩いている。豆の葉のところで、 バッタが、はねた。  足もとに、はっぱがある。赤茶色、黄色、黄土色。  ミイは、百日草の、下に、いる。

*POEM LETTER「天気予報」No.30 岡山市惣爪330 小舞方
*淡々と、事実のみをつづっていくことで、逆に悲しみを耐えている作者の姿が浮かんできます。 ミイの死に、作者やおじいちゃん、おばあちゃんだけでなく、もんしろちょうや、カラスや、くもや、バッタの 生の営みが寄り添っている。その情景はゆたかです。

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