夏の傷 堀 剛
秋が来るのが遅すぎた 憂鬱な季節変わりの風が吹き始めると ほとんど血の気もないほど 僕は透明である 透明な声で 君に語りかけてみる 透明な情熱で置き去りにする言葉を探してみる 遅すぎた秋が 今頃になって僕をすり抜けて行くと やはり 夏の傷が 疼いてくる 透明なままで 再び身体を取り戻すことさえなければ 良かったものを 気がつけば いつもそこには 朝が準備されている すると 僕が僕に語りかける声までも聞こえてくるではないか 半透明に色づいて 身体などを取り戻し始めている 夏の傷をくっきりと浮かび上がらせている