Negative Message

雨だれを感じているんだ。 古びた家屋の軒下にたたずんで 身じろぎひとつもしないで ただ ぼくの静寂に降りそぼる雨だれを。 ぼくのなかで いろんなものが終わっていく。 音もなく崩壊するひとつの時代を ぼくはいま見つめている。 敗北をではなく なすすべもなく、すりへってしまうあるもののこと。 そして、今この時に至ってさえ ある軋みとともにぼくを同伴しようとする毎日に向かいあって もう、やってはいけないんだ、と告げた。 まるで裏切り者 ― 。 ぼくの目前で 情景が、かすかに変位する。 だが、それは歴史ではなく 毎日のなかにぬりこめられていく、ぼくらの無力。 軒端を掠めて飛翔する 一羽きりの風 ぼくは何者なのだろう。 ぼくのなかに降りそぼる雨だれを数えながら みえないもの、通り過ぎてしまうものの軌跡に 思いを傾けていた。 この身を、すかんぴんの貧しさにとり戻すんだ。 もっと、もっと寂しくなるんだ。 そうあるべきもの、正しいものの一切合切から孤独になって ひとつの静寂を抱くんだ。 ひとつずつ確言を脱ぎすてていくんだ。 すべての判断と意見をしりぞいて ぼくのなかの忘却に降りて行くんだ。 それでも、うらみがましい目をして、ぼくの気を引こうとする まるでぼくと一体のようだった毎日のすべてから、しりぞいて。 ぼくの首筋を、ひとすじの脅えが走った。 正面切って闘うすべを知らなかった、ぼくの静寂に 言葉が落ちた。 同化をおのが根拠にはしきれなかった者の孤独な呟き。 無力な言葉が、ぼくのなかの忘却に 落ちた。 誰一人、そのことを知らない。 そして誰一人 ぼくのなかを、音もなくせり上がる水位 この冷たい熱狂を感じとることはないだろう。

戻る

ホームページ