詩集「キュウリ畑でキッスした」 野口善正
テント
冬よまたすべてのあかりをけして おもいはひとつずつ ぬくもりにいろどられ 冬よまたすべてのあかりをつけて おもいはひとつずつ かがやきをましながら 夜をぬけ森をぬけ街をめぐり とおい星につたわれ
悠々
僕達は笑い合う 君が今朝 手に持っているものは さっき咲いたばかりの 矢車草だ 僕が寝ている車の 窓を 太陽と共に 君はたたく 僕達がそこからやってきた 星のことを毎朝 憶い出させるために 君はさんざしと はしばみの叢で眠る 僕はこの古い車に潜りこんで眠る そうして 朝露に手を染める前に暖かい コーヒーを一杯ここに座って 一緒に飲もう。