脳みそチップ98/だまれ政党!
草壁敦著
にほんアホ新聞
日本海上を北上する沈没タンカーの重油を
ただ空から写真とって会議するだけのバカ大臣あり、
岸に漂着したのをひしゃくですくうアリのボランティアあり、
北に雪遊びしている百人の自衛隊あり、
だ。
又
東南アジアで無償援助をばらまいてくる総理あり、
日本国家に千五百年税金を払ってきた子孫にして、
新宿路上にて凍え死ぬものあり、
だ。
又、
阪神大震災、ただ見ていただけの消防あり、
やがて株、円、暴落、
住宅専門金融、銀行、崩壊、
無能、無策、魯鈍、
東京大学同窓会のせいで、国、ほろびそう、
だ。
とらんぷ
カードがある。
トランプみたいなカードで、世界に百数十種類ある。
発行元が一種類ごとに違っている。
カードの名前もみんな違う。
トランプよりも薄くて、もっと長い。
参加者みんなにバラまかれて、回っているうちに、
だれかのところに多く集まってゆく。
そのカード一枚あれば一つの家族が一日生きてゆけるとすれば、
360枚あれば、一つの家族の一年分の衣食住がまにあう。
上手な人は一年に360億枚でも、それ以上でも集める。
ゲームはもう終わってしまったか、終わりかけているかだ。
負けた人たちが怒っている。
「このゲームには、インチキがあった」
「いや、正当な勝利だ」
論争が続いている。
今では、お互いに武器を持ってにらみあっている。
カードなくてはうえ死にするばかり。
ない人は、たくさん持っている人から仕事をもらって、報酬にカードを分けてもらう。
世界のひと握りのカード持ちが王様ぐらしで、あとの全部が奴隷ぐらし。
税金と見栄で、カードを使ってしまったのだ。
それでも世界には
自給自足の主義やら、物物交換の主義やら、
自然農法、農薬も肥料も買わない主義やらがあって
お日さまと雨と土だけあれば陽気ぐらし、
カードの魔力もこんなやからにはてんで通用しない。
鉄でも、農具でも、電気でも、
必要なものはたいてい自分でつくってしまう。
「カードは、あれば便利
なくてもかまわない」
カードのことを通貨といって、円とかドルとかの単位で数える。
カードの発行元を政府という。
世界に百数十あって、国際連合というものをつくっている。
みんなグルだ。
*脳みそチップ98/だまれ政党! 草壁敦著 水星舎発行 〒036-8186 弘前市富田3-6-13
水星舎で発行されている詩誌「メロス」に載せられていた作品を集めたものだと思いますが、文庫本としてまとめられると、詩でも、小説でも、論文でもない、いわばあらゆる方向に突出していこうというエネルギーの塊のようなものを感じます。
最後の「みんなグルだ。」という言葉の落ちはいい。この一言のために一冊が費やされているとしても十分だと思う。