折りたたまれたもの 谷内千鶴子
折り紙の風船や鶴 引出しの奥の着物 たくさんの手紙 折りたたまれたものを ひろげてみたいときがある それはたぶん途方もなく大変な作業なのに 折りたたまれたもののひだを まさぐっていると それは思いもしなかった形相をして 巨きくひろがり もう収拾がつかないのだ 幼い指で折りこんだものが わたしの指に甦える 装った体のぬくもりが伝わってくる 折りたたまれたことばが わたしをあわてさせ混乱させる 折りたたまれた時間がたちあがる ふと気がつくと ほの暗い部屋に わたしはひとり とり残されている 頭や手足を折りたたみ まぁるい胎児の形をして それを広げようともしないで