詩集「ピアノ」 いずみしづ 著
いっぽんの菜の花
気がつくと ワタシは菜の花畑にいた ぎっしりと花びらをつけた 菜の花たちが 右から左から 押し寄せてくるので 息苦しくなって空を見上げた 空は青い筈だったが 何故か黄色い空が拡がっていた 風が吹いて来ると みんなと同じように 右へ左へ体を傾けた そうすると 甘い香りが漂って 空に浮かんでいるような気がした どこかで鳥が鳴いていた 大きく息をすると海のにおいがした 夜になると みんなでかたまって眠った 目をとじても 黄色い影が右へ左へ揺れていた すぐ近くで水の音がした どこまでも続く 黄色い道を歩いている気がした