試験監督 1  江原茂雄

                        いつもは活発に というよりは騒がしく しゃべったり 笑ったり どなったりしているおまえらなのに いつまで経っても静かなままだ もう書くことがなくなって ぼんやりしている そんな顔のひとつひとつに 寂しさをさえ感じてしまうよ もう 答えることがないのだろう 何にもすることがないのだろう 何もすることがないということは 夢も希望も友達も学校も 世界全体を失くしてしまい 自分ひとりになってることだ いや 世界全体が失せた時には 自分があっても自分じゃない だから おまえたちは 今 しんに寂しくなっているのだな そういう時 人間は こんなにも寂しい顔をするのだな 私だって今の瞬間 何にもすることがないのだよ

*「眼」11号より。 発行 文学同人・眼の会
 江原さんはまた、原詩人通信という詩紙の編集、発行もしておられます。
 両者ともに、現実を見る眼を大事にし無名人の声と詩、という方法を自覚的に選び取っているという印象の詩誌です。

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