地球に吹いた風に 清水博司
これから あれから それから そうしていつから風が吹いたのだったろう 踵を返して去って行く時を 目撃した 火葬されたあなたがいて 土葬をねがうぼくがいる 土饅頭の中で 蛆やふんころがしやみみずや そういったものと 仲良くしていたいのだ 時代が 再生され 再声され ゆがんだりのびたりするテープの中を 駆る それはぼくの責任じゃない 胎児が嬰児になったとき 腐敗しはじめたので ホロマリンを用意して テープを浸ける それもぼくの責任じゃない ぼくの土饅頭は下がり ある日の正午きっかりに 陥没する ああ その日ぼくは ようやく 地球に吹いた風に 紛れて 『詩のちらし』1988年1月15日号より