新日本文学7、8月合併号
特集 詩による現代史の試み
詩人たちにとって、始まりの光景とはどのようなもの
なのだろうか。自らの記憶を遡り、遡り、ある種の底に
突き当たる。そこには何があるのだろうか。
おそらくそこに垣間見えるのは、歴史である。しかし
それは客観的な歴史でもないし、正史としての現代史で
もない。
それぞれの切実な発端として、始まりの場所は切実に
作動する。それは歴史に埋め込まれてあるのではなくて、
歴史における無数の特異点として、逆に歴史というもの
を充電しているのではないか。
始まりの場所へ、そして、始まりの場所から。詩とエ
ッセイによる試みである。
始まりの場所へ(詩)
田端宣貞・木島始・津金充・下澤勝井・草津信男・近藤計三
黒羽英二・西杉夫・沢孝子・井之川巨・松本恭輔・弓田弓子
瀬生江光洋・島つなみ・早川純・原田克子・下前幸一
森川雅美・平岡けいこ・辻元佳史・片岡美沙保
始まりの場所から(エッセイ)
羽生康二・石川為丸・働 淳・寺西幹仁
小説 私たちの手紙(新日本文学賞佳作) 浅井昭人
エッセイ 深尾庄介さんと水曜会の思い出 中野武彦
報告 第6回野間宏さんをしのぶ集い(関西)日野範之
6月号は「あいうえおの会」の編集で制作されました。
〈編集後記〉より
今号の編集は、活動会議「あいうえおの会」の担当なのですが、昨秋、
編集責任の四方さんが急に入院、闘病ということになり、代役を務める
ことになりました。
あいうえおの会の編集として、前回九九年七月号では、共同詩「いま
列島は」と題して、列島各地の詩を、空間的に編集しましたが、今回は
それとのつながりも考えて、時間的な編成を考慮した共同詩を考えまし
た。詩を時間的、時代的に配置すること、それによって、詩による現代
史のようなものを構成すること。
詩特集の方は「始まりの場所へ」と題して、始まりの場所、誕生日を
テーマにした詩を依頼しました。その際、誕生日の何をテーマにするか
は自由とし、誕生日そのものでも、だいたいそのあたりの時代をテーマ
にしてもいい、ということにしました。
一方、エッセイの方は「始まりの場所から」と題して、詩作や表現活
動へとつながっていく原体験を描いていただくことと、そこからどのよ
うな詩や詩論が展開されていくだろうか、ということをテーマに書いて
いただきました。エッセイを依頼したのは働さんを除いては、会員外の
方たちです。
羽生さんは詩誌「想像」を発行され、「昭和詩史の試み」を連載され
ています。石川さんは沖縄から詩誌「パーマネントプレス」を発行され、
旺盛な批評活動を続けておられます。寺西さんは関西で「詩マーケット」
を主宰されています。それぞれに独特の活動をしている方たちで、その
エッセイはそれぞれにとても魅力的なものだと思います。
というわけで、詩による現代史の試み、読者の判断を仰ぎたいと思い
ます。
(下前幸一)
発行 新日本文学会 〒164-0003 東京都中野区東中野1-41-5
TEL:03-3362-8771 FAX:03-3362-4526
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