詩集「呼吸のソムリエ」   中尾彰秀 著

   洗濯バサミ

何も挟んでない時は 静かに合掌している 挟んだら必ず成仏させる自信 時たま 太陽の片鱗 挟んだまま 屋上に忘れられ

   糸

秋空の糸引けばキュンそこに在り キュン 声がして 一輪の紅い花が咲く 百数十億年経た 宇宙の究極の答 道添いの細長い公園の入り口 少し窪んだ ひかりのひと休みする その地点へと 操られ あたかも 自分の意志であると 思い込み 収まるべき ピッタリの 場所で お金の事かな 建築のことかな 運転のことかな 政治のことかな 文化芸術のことかな かな かな かな 誰かが 誰かの 何かの お役に立って ホッと一息ついている 秋口草々と赤土に抱かれた 昼下がる公園ベンチ 金色の糸 頭へ肩へ降り注ぐ 青年にせよ

*発行 竹林館 京都府長岡京市井ノ内坂川25-21
*著者の13冊目の詩集です。
 詩以前=詩以降、言葉以前=言葉以降の場所で発せられた詩、と言えるでしょうか。存在自体が詩のような人です。
 最近は、詩を朗読する詩人の会「風」の代表世話人としても活躍されています。

戻る

ホームページ