詩集「砂のポスト・ストーリー」

     ただ羅列がある

まわりに一点の人影もなく 私の前後に 私という羅列がある。 人影もなく、ただ羅列がある。 情景もろとも 舞台装置が砂に沈む つかのまの物語がかき消える時。 あなたが等号の私であり、 演算の彼方の不在である時 イメージがやせた裸身をさらし 目尻からとめどもなく砂漠が溢れ落ちる時。 あなたはやがて叫ぶだろう まわりに一点の人影もなく あなたの前後にに ただ、羅列を発見する時。 私は叫ぶだろう 私たちの間に物語がかき消える時。

収拾の彼方に

収拾の彼方に 都市は屹立する。 記憶を僕は埋葬した。 今となっては、とても個人的な記憶にすぎない。 記憶を深く砂に沈めて 瞬時、黙想する。 だが、個人的でない記憶などあるだろうか。 収拾の彼方に屹立する都市。 自己増殖する膨大な演算子。 僕は記憶を深く自らに沈めた。 そして僕自身の手で自らのスイッチを切る。 闘う糸口すらつかめないまま 分子的な一個の変数として演算にのまれた。  … 『昔に、何かが起きたのだ  僕の知らないことだけど ― 』

 逃げ水

追いかけても 転んでも 逃げ水 「また取り残されてしまった … 」 遠い 微かな 繁栄のイルミネーションが 僕らという物語を背後から浮かび上がらせる 茫漠とした砂の海の彼方に 瞬時佇立するシルエット / 沈んでいく。 追いかけても 転んでも ただ逃げ水 だ。 「いつまでも僕はまにあうことはないだろう」 ここに生成し ここに接続し ここに滅びる 振り返れば すでに異郷。 共同体を求めない

*詩集「砂のポスト・ストーリー」
B6判160ページ 定価1000円(送料サービス)

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