祝祭
声は空の彼方から降りて来る。 一九八八年、日本帝国の都市。 きみは傾きながら 道を歩いて行く。 コンクリートの壁に煙草をもみ消し、 それから告げる いわれない、ぼくらの罪状。 ぼくらの地平線は、排気塔の足元で煤けていた。 ぼくらをやがて包む夕闇は、 なすび色の発色剤に染め抜かれていた。 知らぬまに操作される 未来のDNA。 ぼくらはひび割れた空の片すみで 無邪気な夢をつむいだ。 自閉は陽だまりのように 反抗は雨のように 完黙はすこやかに、ぼくらを育んだ。 友達よ いま、きみは日射しの白い領域に向かって駆け出し、 きみがいま暮らしている場所には、 見えない鉄格子がくっきりと影を落とす。 ああ はれやかな祝祭よ 来い! 声は空の彼方から降りて来る。 一九八八年、日本帝国の都市。 きみは半身を沈没させながら 道を歩いて行く。 コンクリートの壁に煙草をもみ消し、 それから告げる きみが自らしつらえた、 ささやかな祝祭。