惜辞「平光さんへ」                       森和技

注意深く 歩という間をたどっても 偏に流される時がある 誰も死に急ぐことの無くなった街を 往還する杖の音が聴える かってその街で具体的であった骨 かってこの国で不在になった骨の 憂き目の否定を掘り起し 歴史という語に重ねてみる 残痕というか 残年の 参究から止観へ 再生は生命の新しい出発という覚醒 または解体 である『骨の遺書』を訓む 時 経だたって 歩と歩の間を縮めても病むことはなく 「失われたもの」への ロマン であった姿勢 詩から死へ さらに無へ その位相をこそ 名実ともに『不動』の睥睨 然り

*「ぱん・ふるーと」35号 春日井市高森台3-20-13、森方
*平光さんという方を存じないので、だからこそ言葉だけしか手がかりがないのですが、 人や生活よりも、精神そのものが伝わってくるのかもしれません。最後の四行は 「焼き場」の煙の言葉でしょうか。いや、言葉以降としての「然り」という響きそのもの。

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