天神橋
谷澤理衣
U
月はわたしを月とみる
風に触れているのは風
時間からはじめて
(・・・何処でもいい、)
時差を渡りはじめる、それは
(・・・誰でもいい、)
あらゆるものが永遠から生じて、・・・ね、
何処でもかまわずはためく時間の枚(ひら)
時間の枚枚(まいまい)へ入っていった
月はわたしを月とみる
風に触れているのは風
月の顔と月の顔
Mr.pascal、廃墟が淋しそうに立っている
それで野末は揺れている、移動したのは何
あらゆるものの脇の漣(さざなみ)で
変速している遥かに多い
白い、名無しさん、と火、飛び、宇宙区の
外苑を跨いで岸伝いに燃えあがる
焔の身軽さが羨ましい
その、ゆるうい遅い、ゆれよう
焔の生きかた
運命を変えて
運命を変えて、と
時差の子等(・・・なの、)と火、飛び
少し目が合って淋しそうに
立っている飛び地には、宇宙区の
崖に似た音、 否否(いいえいいえ)
祓い清めの鳴弦の、怒涛鳴りわたる
新鮮な水火、(と脇の漣)は、 皆皆(みんなみんな)、おいしいかい
盛大に引く弓弦絶えず、絶えず
新鮮な空土、(と脇の漣)は、 皆皆、おいしいかい
時間の枚枚へ入っていった
(最後の一日には
手品をしようと、想う、・・・想うのだよ)
さらに、月
走る一千夜、重層に月
月は照るらし、死人(しじん)さん
死人さん
永遠の奥で待ちつづけている
《 sennichimae station 千日前 ふ11:17 》
*KAIGA55より 大阪市西成区千本中2−11−15
画面の制約でルビ等一部原文を変更しています。ごめんなさい。
97年4月号より
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