ティミムーン2 下前幸一
ティミムーン 赤砂の漠 白昼の 通りに焼きつく光と 断続する思考 ひとり そこにはなにもなく 僕という冗長に耐えていた 微かな耳鳴りのずっと奥深く 立ち止まれば ざわめきが聞こえる はるかな記憶と忘却の背後から ひんやりとした後悔が 今という際へ流れてくるのだ ティミムーン 赤砂の漠 乾いた砂の大地にしがみつくような ただ一点の疑い 僕は広い場所にいる なにもすることがなく なにを急ぐこともない 白昼の影は眠りを囲い 子供の声はどこかで跳ねる 白服に身を包んだ老人が ゆっくりと歩いていく ティミムーン 赤砂の漠 地に張りついた影のように 仮設の思考に 僕らは囚われていた 幾分かの闇を病んでいた 暮れかけた部屋の 薄っぺらな孤独に 僕らは少し壊れていた 紙のように僕らの心は どこかしら破れ それでも言葉の方へと 白々とした身を乗り出したのだ ティミムーン 赤砂の漠 存在のずっと奥の方で 自動販売機の微かなうなりが 絶えず鳴っていた 欲望はどこかで鋭角にねじれ 幾たびも 自ら自身の影を傷つけた 地下鉄の通路に落ちた影 希望の見えない薄闇に苛つき 不信の波間に溺れながら 僕は君を好きだと言った ティミムーン 赤砂の漠 焼けた空気の粒々が 微かに軋みながら 僕を苛む 馴れ合いを拒む白昼の 長い待機の時