徒歩 堀 剛
しのびながらも 昨日を捨てて 立ち止まらず 振り返らず ささやかに やがて今日を思い出すために 平和に 現在をさらに追いやりながら 時間仕掛けの小径を歩き 考えながら 今日を思い出せるようにと <前進> それは何かの雑誌のタイトルではないのだ 今あるものを忘れるための仕草である 立方体 表 裏 前後 左右だってある すっかり僕の肉体に内包した個よ ひらりと落葉するような 着地など 無縁なのか 僕には だが、やがて明日でさえ思い出せるように しのびながらも 昨日を捨てて 立ち止まらず 振り返らず。 1997年 5月 7日